アトピー性皮膚炎の炎症や痒みなどを短期間での改善を期待できます
内服JAK阻害薬は新たな選択肢として注目されています。
JAK(ヤヌスキナーゼ)とは、細胞内シグナル伝達に関与する酵素で、免疫系の活性化に重要な役割を果たしています。内服JAK阻害薬は、このJAK酵素の働きを抑えることで、免疫反応を調節し、炎症を軽減することを目的としています。
代表的な内服JAK阻害薬としては、トファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブなどがあり、これらの薬剤は、JAKの異なるサブタイプを特異的に阻害し、炎症の進行を抑える効果があります。
内服JAK阻害薬は、重度のアトピー性皮膚炎に対して効果的であるとされ、従来の治療法では十分な効果が得られなかった患者に対して、新たな治療の可能性を提供しています。
主な利点として局所療法(外用薬)では限界があった全身的な症状の改善を期待できる点で、アトピー性皮膚炎の症状を持続的に管理するための新たな手段となります。
内服JAK阻害薬の適応条件
- 妊娠または妊娠している可能性が無い方
- 授乳中ではない方
- 中等度以上のアトピー性皮膚炎でステロイド外用薬やプロトピック軟膏などによる治療(6カ月以上)で十分な効果を得られなかった方
- 2歳以上
下記に該当する方は投与に注意が必要です
- 悪性腫瘍の既往のある
- 肝機能異常がある
- 腎機能異常がある
- 感染症に結核に感染している
- 生ワクチンを接種する予定がある
内服JAK阻害薬の治療の流れ
まずは診察を受けていただき、適応と判断されれば、次回のご来院予定を決めて投与開始となります。
- ① 治療開始前に血液検査や胸部レントゲン検査で下記の事項について確認する必要があります。
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※半年以内のレントゲン検査で異常が無い場合は胸部レントゲン検査は不要です。
- 感染症の罹患有無
- 結核の罹患有無
- B型肝炎ウイルスの感染有無
- 血液中の好中球数、リンパ球数、ヘモグロビン値の異常有無
- 肝機能異常、腎機能異常の有無
- ② 投与後、定期的に検査をいたします。
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- 血液一般検査: 投与後1~2カ月後。その後は3~5カ月に1度の間隔。
- B型肝炎、結核、血液検査、胸部レントゲン検査: 年に1回程度
可能性のある副作用
- 感染症のリスク増加
- 血液検査異常
- 肝機能障害
- 吐き気、下痢、腹痛など
- 高脂血症
- 頭痛やめまい
- 高血圧など
取り扱い内服JAK阻害薬の種類と薬剤費
名称下段()は一般名 | オルミエント(バリシチニブ) | リンヴォック(ウパダシチニブ) | サイバインコ(アブロシチニブ) |
---|---|---|---|
適応疾患 | アトピー性皮膚炎 円形脱毛症 関節リウマチCOVID19 |
アトピー性皮膚炎 乾癬性関節炎 潰瘍性大腸炎 強直性脊椎炎 関節リウマチ |
アトピー性皮膚炎 |
阻害分子 | JAK1 JAK2 | JAK1 | JAK1 |
代謝経路 | 腎排泄 | 肝代謝 | 肝代謝 |
腎障害時 | eGFR≧60 4㎎を1日1回 30≦eGFR≦60 2㎎を1日1回 eGFR<30 投与しない |
副作用が強く現れる恐れがある | 副作用が強く現れる恐れがある |
肝障害時 | 副作用が強く現れる恐れがある | 重度肝障害時は禁忌 | 重度肝障害時は禁忌 |
適応年齢 | 2歳以上 | 12歳以上 | 12歳以上 |
副作用 | 血栓症 帯状疱疹 | 血栓症 帯状疱疹 ニキビ | 帯状疱疹 単純ヘルペス |
薬価 28日分の窓口負担 (3割負担) |
2㎎ 19,320円 4㎎ 37,663円 |
15㎎ 36,337円 30㎎ 52,492円 |
100㎎ 36,014円 200㎎ 54,022円 |
高額療養費制度について
幾つか助成制度がありますので、下記のリンク先をご参照ください。
子どもへの医療費補助制度
各自治体で、子どもに対する医療費助成制度が設けられています。
対象年齢、助成内容、申請方法が自治体により異なりますので、詳しくはお住まいの市区町村にご確認ください。